世界最高峰のバスケットボールリーグといえば、NBAですね。
当ブログでは以前、市場規模からNBAのスゴさを紹介しました!
言うまでもなく、世界最高峰たる所以はリーグ所属の選手のレベルの高さにもあるわけで。
日本で日々バスケの練習に取り組む方や、そんな子どもを持つ親御さんは、スキルアップのためにNBAを見ることもあると思います。
NBA発で、かつ日本人でも有効に活用できるスキルの代表といえば、「ゼロステップ」でしょう。
FIBA(国際バスケットボール連盟)では2017年に、JBA(日本バスケットボール協会)では2018年にルールブックが改定され、ゼロステップをリーガル(バイオレーションでない)と定めました。
以降、日本国内のバスケスクールや部活動等でも盛んにこのゼロステップを扱うようになりましたが…
正しく理解・指導されていないケースが度々指摘されています。
国内リーグ「B.LEAGUE(Bリーグ)」の選手ですら、正しくゼロステップを活用できていないケースが多いのです。
例えば、下記動画をご覧ください。
理由は後述するとして、これは明らかにトラベリングですね。
プロですら、イリーガルの判断ができていないのが日本バスケの実態なんです。
※2年前の動画ですが、プロチームがこういう動画を公開し続けている時点で取り上げるべきだと感じました
ゼロステップに端を発するこの問題は、国内バスケにおける「トラベリングへの意識の低さ」という、本質的な問題を浮き彫りにしています。
「ゼロステップを理解できていないからゼロステップを活用できない」のではなくて、「トラベリングを理解していないからゼロステップもよくわからない」のです。
例えば、「ゼロステップを使えば3歩まで歩いて良い」と解釈している人はいませんか?
こんなルールはありません。
ゼロステップだろうとなんだろうと、3歩も歩けばトラベリングです。
そこで本記事では、改めてゼロステップとトラベリングの基礎についておさらいしていきます。
基本から理解できれば、何がトラベリングで何がそうでないかが自己判断できます。
自主練習もしやすくなりますし、親御さんはお子さんの練習を見てあげやすくなりますね。
NBAをもっと効果的な教材とすることも可能です。
では、いきましょう!
「ゼロステップ=3歩まで歩ける」は正しくない
まずはゼロステップの基本をおさらいしましょう。
ゼロステップはNBAで誕生した概念です。
ボールをコントロール(ギャザーとも)の瞬間までに踏んだステップを0歩目とし、次のステップを1歩目とするルールのことです。
※コントロールの瞬間=ボールを両手で持ったときか、片手または両手でボールを支え持ったときのこと(JBA競技規則)
JBAでは次のように定義されています。
動きながら足がフロアについた状態でボールをコントロールした場合、フロアについている足は0歩目とし、その後2歩までステップを踏むことができる。その場合、1歩目がピボットフットになる。
つまりゼロステップとは「3歩歩けるようになります」というルールではなく、あくまで「1歩目をどこにするか」という取り決めなんですね。
単純に3歩まで歩けるようになると理解していると、イリーガルになる場合が少なくありません。
※詳しくは下記Q&Aで後述
まずはこの定義を押さえておきましょう。
「トラベリング=3歩ステップを踏む」は間違い⁉︎
そもそも、どうしてゼロステップを踏むのでしょうか。
トラベリングをコールされない範囲で、ギリギリまで歩数を稼いで移動距離を増やすためですよね。
つまり、本質は「ゼロステップを踏めたかどうか」ではなくて、「トラベリングか否か」のはずです。
「何を当たり前のことを」と感じるでしょうか。
でもゼロステップ関連の解説動画などでは、「ゼロステップは踏めているけどトラベリング」という内容が本当に多いんです。
これは「ゼロステップを踏めたかどうか」に固執するあまり、「トラベリングか否か」という本質を見失っていますね。
そこで改めて、トラベリングの定義について確認していきましょう。
一般的に、トラベリングは「3歩歩いた際にコールされるバイオレーション」だと理解されています。
確かにとても分かりやすいのですが、これは正しいとはいえません。
以下、シチュエーションを2つに分けたうえで、①ピボットフット(1歩目)、②ドリブル移行時、③パス&シュート移行時の3つの要点からみていきます。
※「動きながら」=ボールをレシーブする前に、明らかな位置の移動がありながら動いている一連の動作のこと(JBA競技規則)
①ピボットフット(1歩目)…片足を上げた時点で接地しているほうの足
②ドリブル移行時…ドリブルの突き出しの前にピボットフット(1歩目)が離れるとトラベリング
③パス&シュート移行時…ピボットフット(1歩目)でジャンプしてもよいが、いずれかの足が再接地した時点でトラベリング
①ピボットフット(1歩目)…コントロール後にコートについた片足または両足(ゼロステップ適用の場合はゼロステップの次の1歩目)
②ドリブル移行時…2歩目がフロアに接地する前にボールを離さなければトラベリング
※ピボットフット(1歩目)が確定後に停止したのちにドリブルを始める場合は、ピボットフットが離れるまでに突き出し開始でOK
③パス&シュート移行時…ピボットフット(1歩目)でジャンプしてもよいが、いずれかの足が再接地した時点でトラベリング
以上のように、トラベリングの判断基準は常にピボットフット(1歩目)の動きです。
対してゼロステップとは、ボールコントロールと同時に踏んだステップを0歩目とし、その次のステップをピボットフット(1歩目)とする概念でしたね。
要するに、ゼロステップは「どこをピボットフット(1歩目)とするか」に関する概念で、あくまでトラベリングの細目的なものです。
ルールとして明確に「ゼロステップ」と言語化されているものは、存在しないのです。
ここでもう一度、上述の動画を見てみましょう。
これがイリーガルである理由は簡単で、ボールをコントロールした瞬間(両手でもった瞬間)に後ろ足(右足)がついているからです。
ゼロステップが後ろ足(右足)に該当するため、右足(0歩目)→左足(1歩目・ピボットフット確定)→右足(2歩目)→左足(3歩目・ピボットフット再接地)という動きになり、トラベリングに該当します。
選手は左足をゼロステップにしているつもりですが、コントロールのタイミングが早すぎます。
これくらいの大きなズレは、国際試合なら当たり前にコールされるでしょう。
こうしたタイミングのズレが、日本では本当に多いです!
昨今はゼロステップを解説する動画教材が本当に多くなりました。
それらを参考にするケースも少なくないと思いますが、このコントロールのズレにだけは本当に注意してほしいです。
正しい教材として、ゼロステップの火付け役であるジェイムス・ハーデンの足づかいに学びましょう。
ドリブルを終えてボールを左手中で静止させると同時に、強く右足を踏み込んでいます。
もちろん、後ろ足はついていませんね。
【Q&A】ゼロステップと両足着地の関係は?他
以上、ゼロステップとトラベリングの基礎でした。
これまでの内容を踏まえて、ゼロステップやトラベリングに関するよくある疑問を見ていきましょう。
されます!
もう一度、ゼロステップの定義を見てみましょう。
>動きながら足がフロアについた状態でボールをコントロールした場合、フロアについている足は0歩目とし、その後2歩までステップを踏むことができる。その場合、1歩目がピボットフットになる。
重要なことは、移動していることです。
>ボールをレシーブする前に、明らかな位置の移動がありながら動いている一連の動作をいう
例えば直立(両足でフロアに立っている状態)でボールを受け取った際に、その場でボールキャッチと同時に0歩→1歩→2歩とステップを踏むことはトラベリングです。
最初の一歩目は0歩ではなく、1歩目となるためです。
ゼロステップはあくまで移動中にのみ適応されると覚えましょう。
なおキャッチしたあとの動きについては、上述のトラベリングの規定に従ってください。
キャッチ時の移動の流れのままドリブルに移行する際は、2歩目の前にドリブルを突き出さなければいけません。
0歩(キャッチ)→1歩(ピボットフット)→ドリブル突き出し→2歩目
このような流れです!
パスとシュートに移るならピボットフット(1歩目)が離れてからで構いませんが、再接地の前にボールを離します。
原因として考えられるのは、大きく3つです。
まず、移動中であったかどうかです。
Q1の回答のとおり、ゼロステップはあくまでもボールが移動していなければなりません。
次に、「ボールコントロールのタイミング」が考えられます。
よくあるのは、先ほどの動画のとおり「ボールコントロールが早すぎること」です。
重要なことは、リズム。
根底から覆すようですが、レフリーだって、毎回厳密に「0歩…1歩…」とカウントしているわけではないです。
「これはあからさまに動きすぎだぞ」というリズムを見て判断しているのです。
もしゼロステップを絡めたフィニッシュムーブでトラベリングとコールされたのなら、コントロール直後の動きがぎこちなかったり、ゆったりしすぎだったのかもしれません。
ゼロステップ後のボールの突き出しも、トラベリングの原因になりがちです。
しつこいですが、「動きながらボールをキャッチしてドリブルに移行する場合」ですと、2歩目が接地するまでにドリブルを開始しなければなりません。
ピボットフットが離れるまでではないので、十分に注意が必要です。
0歩(ボールキャッチ)→1歩→2歩→(1歩目が離れるまでに)ドリブル開始
これではトラベリングだということです。
正しくは…
0歩(ボールキャチ)→1歩→ドリブル開始
ですね。
されません。
バスケットボールにおいては、両足着地は移動をストップさせるステップなので、「動きながら」という定義に該当しないからです。
では、ゼロステップで踏み切って両足で着地した場合はどうでしょうか。
コントロール時にボールは移動していますから、ゼロステップが適用され、トータルの歩数では0歩→1歩。
下記のように両足のまま踏み切って両足で着地すればトータルは2歩ですから、リーガル?
これは、NOです。
トラベリングの定義を再度思い返しましょう。
>ドリブル移行時…ドリブルの突き出しの前にピボットフット(1歩目)が離れるとトラベリング
>パス&シュート移行時…ピボットフット(1歩目)でジャンプしてもよいが、いずれかの足が再接地した時点でトラベリング
※止まった(両足で立った)状態でボールをキャッチした場合の定義。1歩目=両足の時点で「動きながら」には該当しない
足がついた状態でボールをコントロールした時点で、ピボットフットが存在しないことはありえません。
両足着地の場合は、ピボットフットが未確定なだけです。
両足で踏み切った場合、すでに(どちらの足であろうと)ピボットフットが離れているわけですから、ドリブル移行ならすでにイリーガルです。
パス&シュートに移行するとしても、2歩目を踏んだ時点でイリーガルです。
「両足着地=1歩」という考え方は間違いではありませんが、正解でもありません。
両足着地は、ピボットフット(1歩目)が未確定だからこそ「まず1歩」として処理されているだけです。
「両足で踏めば1歩!」と考えていると、おかしなことになってきます。トータルの歩数にとらわれず、トラベリングの定義としてしっかり覚えましょう。
なお、ゼロステップ後の1歩目で踏み切って2歩目を両足着地にした場合は、ピボットを踏めません。
まとめ
以上、ゼロステップの解説でした。
NBAにおいてゼロステップが認められるようになったのは、あくまで試合をスムーズに進めるという意味合いが強いです。
ディフェンス3秒ルールが設けられた背景に似ていますね(過去記事をご参照ください)。
バスケットに限らず、プロ化されているスポーツは競技性とエンターテイメント性の2つの顔があります。
ゼロステップは元々曖昧だったルールをもとにエンタメ性として誕生し、競技性として結びつけられたパターンでしょう。
NBA選手の基本ムーブとして、毎試合必ず見られるテクニックですので、ぜひ参考にしたいですね!