リーグMVPに2度も輝き、悲願の初優勝も果たしたニコラ・ヨキッチ。
センターでありながらボールの扱いに長け、ナゲッツのチームオフェンスの要衝として活躍してきました。
バスケットの技術だけでなく、ユニークな人柄もヨキッチの人気のわけ。
MVP受賞選手であり、いまやリーグチャンピオンでもあるヨキッチは、「私の人生においてバスケットボールは最重要なことではない」と言い切っています。
これは、NBA入りを「ビッグドリームの実現」ととらえる多くの人々(特にアメリカ人)からは、とても不思議な言葉に聞こえたことでしょう。
「ポイントセンター」という新たな概念をバスケットに生み出したヨキッチは、美しいプレーだけでなく、私たちに「真新しいNBA選手の生き様」を見せてくれます。
そんな彼の魅力を端的に表すエピソードを3つ紹介しましょう。
自然体すぎるヨキッチのエピソード3選
ドラフト指名の瞬間は熟睡中…
NBAのドラフト指名会場には、グリーンルームと呼ばれる「VIP席」が用意されています。
ここに座れるのは招待されたドラフト候補選手のみで、いずれも上位指名が予測される選手たちです。
ここでいう上位指名というのは、1巡目指名のこと。
ヨキッチは2015年に2巡目11位(全体41位)で指名された選手なので、グリーンルームにはおらず、壇上に上がってNBAコミッショナーのアダム・シルバー氏とも握手をしていません。
じゃあドラフト当日にヨキッチは何をしていたかというと、セルビアにある自宅で熟睡していたんだそうです。
当時ニューヨークに住んでいたヨキッチの兄からの電話で、ヨキッチは自信がドラフト指名されたことを知ったと言います。
ヨキッチの兄は電話の向こうで、弟が熟睡していたことに驚愕。
「ドラフト当日になんだって寝ていられるんだ!」と言われたそう。
ちなみにヨキッチの指名順位は、MVP受賞選手としては過去最下位です。
※モーゼス・マローンはドラフト指名なし
練習せずポケモンを5時間視聴
ヨキッチのユニークな人柄を表すエピソードは枚挙にいとまがありませんが、私が一番好きなのはこちらです!
2019年の10月22日(現地)、2019-20シーズンの開幕戦前日に当たるこの日、ヨキッチはチーム練習の後で囲み取材に対応しました。
記者から「直近の2日間にかけて、何か(個人的な)練習をされましたか?」と聞かれたヨキッチは、「No」と即答。
そして次のように答えたのです。
「家にいて…ポケモンを5時間くらい見ていたよ」
実はヨキッチ、ポケモンのアニメが大好き。
特にお気に入りのキャラクターは「サトシ」なんだそうです。
とはいえ、大事な開幕戦に向けてすることじゃないような気もしますが…この緩さがヨキッチらしさなのかもしれませんね。
ちなみに、インタビュー翌日の開幕戦では、ブレイザーズに108-100で勝利しています。
ヨキッチはというと、20得点、13リバウンド、2アシストの活躍。
当該選手が出場している間の得失点差を示す指標「+/−」は+14と、ナゲッツの勝利に大きく貢献しました。
アニポケ、おそるべし。
オフには競馬や乗馬に興じる
セルビア北西部のソンボル出身のヨキッチは、馬への愛を隠しません。
自身初となる優勝トロフィーを引っ提げて今年もセルビアに帰省したヨキッチは、馬術競技場によく足を運んでいるそうです。
観戦はもちろん、自身も馬に乗るヨキッチ。一般的な乗馬とは異なり、トロットレースを好みます。
トロットレースとは、日本では繋駕速歩競走(けいがくそくほきょうそう)と呼ばれる競技のこと。古代の戦車を発祥とする繋駕車(けいがくしゃ)を馬に引かせ、競走します。
地元メディアが、実際に馬を駆るヨキッチを撮影していますので、見てみましょう。
なお、今夏もしっかり競馬に励むヨキッチ。連日の祝勝会でハメを外す様子がネットで話題になっていましたね。
揺らぐことのない故郷への愛
優勝直後のインタビューにて、「いまどんな気持ちですか?」との質問を受けたヨキッチ。
彼は笑顔で「仕事は終わった。さぁ、家に帰ろう」と答えました。
これこそが、ヨキッチのユニークな人柄の源泉です。
バスケットは彼にとってはあくまで仕事。人生において最も優先される事柄ではないのです。
ヨキッチは引退後について、ソンボルに帰ってトロットレースのコーチをやりたいと語っています。
また大好きなアイスクリームも、アメリカよりソンボルのほうが美味しいとも話していました。
「ソンボルでの生活は、何かに追われるようなこともなく、とてもゆっくりだ。それでいて、すべてがある。運河や、いまの私たちが街の外に行かなければ見れないような自然もね」
NBAチャンピオンで、2度のMVPに輝くヨキッチは、何よりも故郷への愛を優先する人物なのでした!