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河村勇輝がNBAで活躍する可能性は? 現地の評価は高いが…

日本時間10月8日(火曜日)、ついに河村勇輝選手がメンフィス・グリズリーズでプレシーズンデビューを果たしましたね。

初戦の成績は9分出場・5得点(FG成功1/2本)・3アシストとなりました。
出場時間は限られていたものの、出場している間は攻守で存在感がありましたね(もちろん、私が個人的な思い入れを持って注視していた点は否めませんけれど…)。

とはいえ、実際、河村選手はこれからNBA選手として順調にキャリアをスタートできるのでしょうか?
考えたくもありませんが、挑戦の道が途絶え、Bリーグで再びプレイを見せてくれるようなことが近いうちにあるのでしょうか?

現地での河村選手の評価、河村選手の契約内容、グリズリーズのチーム事情などから、河村選手の現時点とこれからを考えてみます!
※本記事は日本時間10月10〜14日に制作しています。

執筆中にさらに2試合が消化されました。10月11日には9分出場で1アシスト無得点でしたが、12日にはロスターの都合もあって出場時間が23分と大幅に増加。2得点、8アシスト、1スティールの成績を残しています。
まだまだシュートに課題を残していますが、ゲームメイクやオフボールの守備などで存在感を発揮しています!

via SportingNews

初戦の現地評価はどうだった?

まずはここまでの現地の反応を見てみます。
河村選手の評価は、実際のところどうなのでしょうか。

「彼は活力に満ちた選手だ」(ジェンキンスHC)

さかのぼること現地10月7日はグリズリーズの公開練習日でした。
この日は毎年、ルーキーによるダンスショーが開催されるのが恒例行事。過去には渡邊選手も踊りを披露しています。

この日はとりわけ、河村選手の踊りがファンを喜ばせましたね!
まったく物おじせず、新しい環境を楽しんでいるようでした。


※ちなみに、ここで披露された河村選手のダンスは、グリズリーズのスター選手であるジャ・モラントから教わったものだそうです

こののち、河村選手について聞かれたタイラー・ジェンキンスHCは「彼は活力に満ちた選手。とても陽気な人柄で、今日はそれをファンに見せられてうれしく思います」と語りました。

「身長以上に大きなプレイをする」(チームメイトのイディー)

センターのザック・イディーは「彼は彼の身長以上に大きなプレイをするんだ。ペイントエリアにドライブして、プレイを組み立てて、ときに自身でシュートも狙う。とても良い選手だ」と語っています。

ちなみにイディーの身長は224cmで、172cmの河村選手との身長差は52cmも差があります!
身長差コンビとして、プレシーズン前からちょっと話題になっていましたね!
身長160cmで、史上最小のNBA選手として著名なボークスも反応しました。

もちろん、話題性だけじゃないこのコンビ。ブルズ戦では会場を沸かせるハイライトも見せてくれています。

「穴にならない方法を理解している」(現地メディア)

具体的なプレイ面では、守備について高く評価されています。
現地メディア「Sporting News」のNBA部門で記者を務めるSteph Noh氏は次のようにポストしていますね。

— Steph Noh (@StephNoh) October 8, 2024

「身長はコントロールできないが、努力はコントロールできる」とは、良い言葉ですよね!
身長が低く、ともすれば「守備面の穴」として狙われかねないところを、河村選手は体を張り、オフボールでも立ち位置に気を配っています。

彼のディフェンスを褒める現地ファンのポストはとても多くて、同じ日本人としてとても誇らしいですね。

「パス以上のことができなくてはならない」(現地ファン)

その人柄や守備への意識、パススキルなどで現地でも評価される河村選手ですが、順風満帆かと言われれば、そんな甘い世界でもありません。
X(旧Twitter)やredditでは河村選手への好意的な意見が見受けられる中で、得点能力を疑問視する声もあります。

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byu/ChillSalamander from discussion
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例えばこのファンは、身長175cmでありながら抜群のオフェンススキルでファンを魅了したアイザイア・トーマスを引き合いに出し、「NBAで生き残るには得点力と守備力が必要。Kawamuraは優れたパサーだが、それ以上のことができなくてはならない」と述べています。

河村選手のオフェンスを疑問視する見方は多いです。事実プレシーズンの3試合で、河村選手は11本のシュートを試投し成功したのは1本のみ。成功率にして9.1 %と低迷しています。

実はこの点について、Number誌のウェブ版「Number web」ですでに懸念を示してた方がいます。
日本を代表するポイントガード、富樫勇樹選手ですね。
自身もGリーグ(当時はDリーグ)で戦った経験がある富樫選手はGリーグについて、個人的な成果が第一の場所だと述べています。

あそこでは、みんなが自分のスタッツだけを求めてやっていました。『チームが勝てばいい』なんて、誰一人として思っていないので。最初の頃は、自分の前がちょっと空いたとしても、他の選手が完全にフリーだったらパスを出していたんです。そうしたらコーチから『ここは他のリーグとは違うんだ。パスを出したら返ってこないんだから、自分で打てよ!』と言われて。もちろん、チームプレーも上手くできないとダメなんですけど、『個人的な結果を残せなかったら意味がない』と。あそこで結構、意識は変わったかなと(Number Webより抜粋)

その上で、河村選手のシュート意識について富樫選手は次のようにも語っています。

チームのプランなのか、彼の考えなのかわからないですけど(河村が)シュートなどに対してかなり消極的というか……今まで試合を見ていて、20~30本近く彼がシュートを打つ試合はあったと思うので、ちょっとビックリした部分がありました(Number Webより抜粋)

公開練習では問題なくシュートできているので、あとはNBAの実践で決めるだけ。自信を持って打ってほしいですね!

河村選手がNBAに残れるシナリオは?

シュート面に懸念があるも、現地の反応は悪くない河村選手。実際ここからNBAに残ることはできるのでしょうか?

残念ながら河村選手は、プレシーズン後に下部リーグであるGリーグに移る可能性が高そうです。
このことは、河村選手の契約を見ればすぐに分かります。

河村選手は「解雇前提」の契約になっている

河村選手は現在、グリズリーズと「エグジビット10」という契約を結んでいます。
これは無保証の最低年俸であるものの、プレシーズン前のキャンプに参加できる契約のこと。
チームはエグジビット10契約を結んだ選手を、シーズン開幕までに2ウェイ契約(NBAとGリーグを行き来できる契約)に切り替えることができます。

仮に2ウェイ契約に切り替えられずに契約解除された場合でも、Gリーグのチームと契約する道が残されます。ここで一定期間(60日間)在籍できれば、河村選手はボーナスを手にできます。

そもそもNBAにエグジビット10という契約形式が導入されたねらいは一つです。
現状NBAチームと契約することはできないが将来性が見込まれる選手を、欧州や中国等の外国リーグに流出させないためなんですね。

つまりは、即戦力の確保よりも、育成に重きを置いた契約形式だということです。
そのためエグジビット10契約は、「下部リーグ行きが前提の契約」と言われることも…。

実際に、スポーツライターとして著名な宮地陽子氏は、次のようにポストしています。

理想のシナリオは2ウェイ契約への昇格

整理しましょう。
河村選手に残されたシナリオは大きく次の3つです。

①グリズリーズと本契約

エグジビット10契約からは、もちろん本契約にも進むことも可能です。
とはいえ、これは相当に狭き門ですね…。

ここから河村選手が、それこそIT(アイザイア・トーマス)のように大爆発して…ということがあれば分かりませんが、現実的ではありません。

②2ウェイ契約への昇格

現実的なシナリオのうち、最も理想的なシナリオがこれですね。
プレシーズンで確かな成績を残し、グリズリーズが河村選手を2ウェイ契約にしてくれれば、河村選手は2024-2025シーズンで最高50試合まで、グリズリーズでプレイできます。

本リーグ・Gリーグそれぞれで実績を残せれば本契約に昇格できますし、2ウェイ契約中はグリズリーズのメンバーとしてワークアウトやトレーニング等ができます。
非常に貴重なチャンスですよね。
過去には渡邊雄太選手がこのシナリオで本契約を獲得しています。

ただし、注意点もあります。
2ウェイ契約は1チーム3枠までと決まっている点です。
現在グリズリーズは2ウェイ契約が埋まっておりますので、河村選手が契約できるぶんは空いていないことになります。
ただしグリズリーズの本契約分は2枠空いていますので、2ウェイ契約選手が本契約に進めば枠が空くことになります!

今後のチームの動きにも左右されるということです。

③Gリーグ行き

2ウェイ契約を獲得できず、Gリーグにいくパターンです。これが最も現実的と言われていますね。
このシナリオでは、まずはグリズリーズが提携するGリーグチームのメンフィス・ハッスルで戦っていきます。確かな実績を残し続ければ、グリズリーズ本隊の状況によってはコールアップ(招集)されることもあるでしょう。

ゆくゆくは本契約も狙えるラインです。

via Memphis Hustle

④解雇

エグジビット10契約後、Gリーグにもいけないシナリオです。
こちらが最も残念なシナリオになるでしょう。

まとめ

河村選手の現時点での評価と、今後のシナリオについてみてきました。
いずれにせよ、すべてにおいて重要なのは、河村選手のこれからの成績です。

日本代表戦でも、チームプレイへの意識が高かった河村選手。
それは素晴らしいことですが、NBAでは一旦置いておくべきかもしれません。
特に得点力の面でまだ十分なアピールができていない現状においては、一にも二にもシュートを決めたいところ。

引き続き応援していきましょう!