EFF(貢献度)で総合力を比較!
NBAの2023-2024シーズン開幕が迫る中、一足先にBリーグが開幕しましたね!
当ブログでは基本的にNBAに関する情報を中心に取り上げつつ、そのほかのリーグについても紹介してきました。
そこで今回は、ワールドカップも終え、新シーズンを迎えたばかりのいま!
Bリーグ選手のパワーバランスが一体どうなっているのかを取り上げたいと思います。
こちらの記事でも触れましたが、プロスポーツというのは国内のキャパシティが決まっています。
つまりチケット収入やグッズ収入には天井があるわけです。
これから人口が増えることもないんですからね。
そんな現状で、今後Bリーグ選手の年俸水準を上げたり、ゆくゆくはドラフト指名なんかもできるようになるには、利益よりもまず先に、売上のボリュームを増やしていく必要があります。
※2026年のリーグ改革については最後で!
国内マーケットのキャパには限りがある中で売上拡大のためには、どうします?
そう。
より大きなマーケットを目指すわけですね。
いま、SDGsって騒がれているじゃないですか。
それと併せて「サステナブル」って言葉が飛び交っています。
持続可能性ってやつですね。
地方行政どころか、地方自治体そのものがサステナブルでないとか言われちゃってます。
私の地元、20年後にはもう消滅するらしいですよ。
それと同じです。
Bリーグも、サステナブルであるためには、世界を見据えてグローバル化していかなければならないわけです!
Bリーグが安定的に規模拡大して、将来的にはユーロリーグのように、BリーグからもNBA選手が生まれてほしいなぁ…とか思っちゃうわけですよ。
そんな思いも込めて、まずは現状把握!
ということで、ランキングに行きましょう。
なおランキングに用いる指標は、EFF(貢献度)です。
詳しい算出式は以下にまとめておきますが、興味ない人や数字が苦手な人は覚えておく必要はまったくありません。
得点数やアシスト、リバウンドなどのポジティブな数字から、ショットミス、ターンオーバーやファウルの数などのネガティブな数字を引いたものがEFFだと押さえておけばOK。
この数値が高いほど、試合に対する貢献度が高いという指標なわけです。
これは個人的な意見ですが、NBAにしろBリーグにしろ、「得点数」とか「アシスト数」とか、単一のスタッツだけで比較するのはフェアじゃないというか、ざっくりしすぎていると感じます。
だって、当たり前ですけど、試投数が多ければ得点数も増えるわけです。
出場時間が増えれば試投数だって増えます。
じゃあ出場時間ってコンスタントな競争の中から勝ち取られているものかって言われると、そうとも限りません。
チームの戦術、コーチの方針、そのときのチームの状況(どれくらい勝っているのか)などによって、まちまちですよね。
しかもBリーグの場合、ここに外国人選手の登録・オンコート規定が加わる。
これに関しては後述しますが、あくまで個人的には、フェアじゃないよなって思います。
ですから本記事では、平均得点などではなく、EFFでランキング付けしていきます。
なお昨今、貢献度についてはPERという新たな指標が用いられることがスタンダードになってきました。
しかしここではBリーグの公式スタッツがEFFを採用していることと、データや時間の不足から私個人ではPERを算出できなかったことから、EFFを採用します。
全体上位30人とトップ5を個別紹介!
全体ランキング30位はこちら!
まずはBリーグ全体で、EFFの上位30人をみてみましょう。
ここでは2022-2023シーズンのスタッツを参照します。
またランキング集計については、2023-2024シーズン第1節開幕時点でどのチームにも登録がない選手は除外しています。
それではどうぞ!
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いかがでしたでしょう?
上位5人の選手については個別に紹介するとして。
帰化選手2名、日本人選手1名を除いて、他27人は全員外国人選手なんですよね。
この件、詳しくは後述するとして、ここでは日本人選手以外の選手区分の定義について簡単にまとめておきます。
②帰化選手…日本国籍を取得済みの元外国籍選手
③アジア特別枠選手…上述の①のうち【中国・チャイニーズ・タイペイ・インドネシア・フィリピン・韓国】のいずれかの国籍を有する選手
上記の区分の選手については、登録人数やコートに同時に立てる人数などで細かな規定があります。
詳しくは後述!
全体トップは島根・ビュフォード!
ここでは全体上位3人について、2022-2023シーズンのスタッツも交えながら詳しく紹介していきます!
ぺリン・ビュフォード(島根・スサノオマジック)
Bリーグ4年目を迎えたビュフォード選手が第一位です。
2022-2023シーズンには得点王に輝いたビュフォード選手は、2023年4月2日の群馬クレインサンダーズとの試合で、キャリアハイ42得点を記録。
過去には11本中11本のフィールドゴールを成功させ、30得点17リバウンド、10アシストのトリプルダブルを達成したこともありました。
2022-2023のレギュラーシーズンでは10度のトリプルダブルを達成し、同シーズンのチャンピオンシップでは史上初となる3試合連続トリプルダブルも達成。
MVP争いでは河村選手に敗れましたが、今シーズンも最高のパフォーマンスを見せてくれることでしょう!
ビュフォード選手は世界を飛び回った選手なんですよね。
大学卒業後はイタリアでプロキャリアを始めたのち、NBAサマーリーグでプレイしたが夢敗れ、オーストラリア、トルコ、プエルトリコ、ロシア、中国、スペインと転々としてきました。
そんなビュフォード選手はBリーグ4年目。
身体能力を生かしたリムアタックやジャンプシュートのほか、リバウンドやブロックでもチームに貢献してきました。
また、勝負強さもあります!
これまで何度となくクラッチショットを沈め、ゲームをクローズさせてきました。
Bリーグ史上に名を残すこと間違いなし。
ぜひ末長く、日本バスケットボール界で頑張ってほしいと心から願います!
ジャック・クーリー(琉球ゴールデンキングス)
2019-2020シーズンから琉球のゴール下を支え続け、2022-2023シーズンには悲願の優勝を果たしたビッグマンが2位!
クーリー選手はリーグに所属してからすべてのシーズンで、リバウンド王を記録しています。
リバウンドのキャリアハイは、2020年12月27日の川崎ブレイブサンダース戦で記録した23本。
キャリア平均リバウンドは11.5本です(チャンピオンシップ含む)。
クーリー選手は元々はトルコでプロデビューした選手で、NBAではジャズとキングスでプレイしました。
その後はイタリア・セリエAでも大活躍をし、日本に至るというわけです。
Bリーグで最高峰のインサイドプレイヤーとも評されるクーリ選手の魅力は、コート内に止まりません。
琉球ゴールデンキングスの安永GMはインタビューで次のように語っています。
「クーリー選手も3年目くらいから日本や沖縄への愛がより深まったと感じました。(中略)
クーリー選手は毎年、右肩上がりのパフォーマンスをしてくれていますが、「給料は右肩上がりでなくてもいい」くらいなことを言ってくれています。それくらいキングス、沖縄、ファンのことを愛してくれているのです」
チームも愛し、ファンのために戦うクーリー選手は、正しく琉球ゴールデンキングスのケミストリーを体現する選手です。
琉球のファンの方々は全員知っています。
クーリー選手はコートに立っていない時間、ベンチから懸命に声を出していることを。
こういう姿勢が、「本当のプロ」なんだと感じますよね!
現在クーリー選手は靭帯炎で故障者リスト入り中。開幕ロスターからは外れています。
復帰時期未定とのことですから、ぜひしっかりと療養いただき、末長く琉球で活躍してほしいと願います。
ニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)
日本バスケ界を代表するビッグマンのファジーカス選手が3位でした。
ファジーカス選手の日本バスケ界への貢献は数え切れませんね。
2012年に川崎ブレイブサンダースの前身である東芝に所属し、当時のリーグ「NBL」初優勝に導きました。
それまで最下位だった東芝を優勝に押し上げたのですから、大変な活躍だったのです。
ファジーカス選手の持ち味はなんといっても得点力。
日本バスケ界ではひときわ大柄でありながら、柔らかなタッチでアウトサイドのシュートも得意とします。
2016年のBリーグ発足時には平均27.1得点を記録し、得点王に輝きました。
このシーズンにはMVPも受賞しています。
Bリーグの通算最多得点記録の保持者でもあり、2022-2023シーズンまでに8,789得点を記録しています。
また2018年には日本国籍を取得し、帰化。
「FIBAワールドカップ2019」では日本代表として、日の丸を背負ってくれましたね。
そんなファージカス選手はすでに、今シーズンでの引退を発表しています。
NBAではマーヴェリックス、クリッパーズに所属したのち、欧州のリーグで活躍。
しかしそこでファジーカス選手は給与未払いなど、大変辛い経験をします。
諦めきれないNBA、プレイするたび悪化していく足首の状態…。
紆余曲折あり、ようやく辿り着いたのが川崎というホームタウンでした。
「川崎のキング」ことファジーカス選手こそ、有終の美を飾ってほしいですよね!
日本人+帰化選手トップ10を見てみよう!
外国籍選手のぞいたランキング発表!
ここでは、日本人選手と帰化選手のみのランキングも見てみましょう!
上記の全体ランキングの中から、「外国人選手」をのぞき、EFF上位10人をまとめた表が下記です!
※帰化選手を加えることに納得できない方もいるかもしれませんが、帰化選手を日本人でないかのように区分するのは、私は嫌です。あくまで個人的な考え方として、ご了承ください
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ホーキンソン&河村の代表組ランクイン
全体ランキング同様に、トップ3を見ていきます。
ファジーカス選手については上で触れたので、ここでは2位と3位を詳しく取り上げますね!
ジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)
ワールドカップで国際的にも大ブレークしたホーキンソン選手が2位でした。
大柄でありながら卓越した脚力を持ち、トランジションでよく走ります。
インサイドはもちろん、アウトサイドからのシュート能力も高いうえ、バスケットボールIQが高くて戦術理解でも頭1つ抜けます。
まさに現代的なビッグマンで、得点してよし・さばいてよしの選手なんですよね。
シアトル出身で、イチローに憧れる野球少年だったホーキンソン選手。
NBAドラフトにエントリーするも指名なく、2017年に当時B2だったファイティングイーグルス名古屋でプロキャリアを開幕しました。
名古屋での2シーズン目から圧倒的な成績を残し、アウトサイドシュートにも磨きをかけました。
信州ブレイブウォーリアーズに移籍してからも成長を続け、B1最高峰のビッグマンになったわけです!
日本への愛も深く、2023年2月には日本国籍を取得しました。
帰化審査は日本語能力も審査されるのですが、ホーキンソン選手は日本語の学習意欲も凄まじくて、ほぼ最短で帰化審査をクリアしたんですね。
そうして日本代表として臨んだ今年のワールドカップでは、1試合平均21.0得点、10.8リバウンドとダブルダブルを記録。
今大会において、1試合平均スタッツでダブルダブルを達成したたった2人の選手のうちの1人に輝きました。
日本を代表するビッグマンはまだ28歳。
これから全盛期を迎え、ますます日本に必要不可欠となるでしょう!!
河村勇輝(横浜ビーコルセアーズ)
日本代表としての大活躍が記憶に新しい河村選手がランクインです!
2022-2023シーズンは河村選手にとっても飛躍の年でした。
2021-2022シーズンは平均得点は10.0得点だったものの、翌2022-2023シーズンは19.5得点を記録。
2023年1月にはキャリアハイの39得点を記録し、翌2月の天皇杯では9本のスリーを成功させ45点と大爆発しました。
若干22歳でありながら2022-2023シーズンには新人賞とシーズンMVPを獲得し、リーグでの存在感をますます強めています。
※Bリーグの「ルーキー」の定義は、必ずしもリーグ所属1年目ではありません
福岡第一高校時代は高校生ナンバーワンPGとして名を馳せた河村選手。
東海大学在学中の2020-2021シーズン、Bリーグの特別指定枠として横浜ビーコルセアーズでキャリアを始めました。
※満22歳以下の選手を、通常のロスター登録制限を超えて2名まで登録できる制度
プロ当初こそ苦戦したものの、プロ2季目となる2021-2022シーズンでは大躍進。2022年1月には月間MVPも獲得しました。
その後、両親らと相談の結果、河村選手は東海大を中退を発表し、横浜ビーコルセアーズと新たな契約を締結し、正式にプロとなったのでした。
中退の理由について、2022年3月3日の記者会で河村選手は以下のように語っています。
「日本を代表するPGとなり、2年後のパリ五輪出場が僕の目標です。目標に近づくためにどうするか考えて、この決断に至りました」
そうして見事に掴んだ、パリ五輪自力出場!
ワールドカップの大活躍は、まさに有言実行だったわけですね!
172cmと小柄ながら速攻では果敢にチャレンジしていき、自分よりも数十センチも大柄な選手とのコンタクトにもまったく怯まないそのスタイルは、世界中の多くの人を感動させてくれました。
同じく、小柄でありながらNBAで活躍したアイザイア・トーマスもツイッター(現X)で反応していましたね!
He was killing!! I see you killa. Us small guards gotta stick together!! https://t.co/w73JRdAJPY
— Isaiah Thomas (@isaiahthomas) August 28, 2023
もちろん、河村選手の持ち味はスコアリング能力だけではありません。
広い視野と素早い判断で、チームのボールをコントロールします。
またディフェンスに対する意識が高く、それがチーム貢献度(EFF)にも表れています。
日本バスケ界を背負う選手であることは、もはや疑いようがありません!
おわりに: 日本人を忖度するリーグにはなってほしくない
いかがでしたでしょうか。
Bリーグのトップ選手について、一覧から見ていきました。
特に全体30位のランキングは、人によってはショッキングに感じるかもしれません。
帰化選手を除けば、日本人選手トップの河村選手でも全体23位。
次に日本人選手が出てくるのは、全体49位の齋藤拓実選手です。
平たくいえば、外国人選手と日本人選手はこれくらい差があるっていうことです。
冒頭でも書きました。
そもそもこの記事で「ランキング」として記事にしているのは、私が「Bリーグの現状を把握したかった」ためです。
というのも、Bリーグではしばしば、「外国人選手の扱い」が話題になります。
2022-2023シーズンでいえば、MVP選出選手がとりわけ大きな騒動に発展していましたよね。
月間MVPを当該シーズンだけで3度も獲得し得点王でもあるビュフォード選手がMVPに選ばれず、河村選手がMVPに選ばれたことで、一部のファンからは「日本人選手への忖度がある」と指摘されました。
島田チェアマンがインタビューでこの騒動に直接言及するなど、「ボヤ」では済まない規模の騒ぎになったのです。
繰り返しになりますが、現状、Bリーグの日本人選手以外の扱いは以下のようになっています。
②帰化選手…日本国籍を取得済みの元外国籍選手
③アジア特別枠選手…上述の①のうち【中国・チャイニーズ・タイペイ・インドネシア・フィリピン・韓国】のいずれかの国籍を有する選手
この①②③の選手の登録・出場には細かな規定がありまして、ざっくりいえば、①外国人選手は登録3人まで、オンコートは各クオーター2人までです。
②帰化選手、③アジア特別枠選手については、いずれか1人をチームに登録させることが可能。
また各クオーターでも、外国人選手最大2名とともに出場させられます。
そもそもなんでこんなルールがあるのかと言われれば、「日本のトップリーグであるBリーグなのに日本人がいない・少数のチームがあってはならない」からですね。
これは商業的に間違っていないです。
日本はそもそも多民族国家ではありませんので、ステレオタイプ的な日本人らしさにとてもこだわる傾向があります。
日本人らしい見た目、日本人らしい作法、日本人らしい言葉づかい…。
そういうものに、消費者マインドも大きく左右されるのです。
では、競技的にはどうなのでしょう。
もちろん、ここで是非を問うつもりはなくて。
厳然たる事実として、Bリーグは2026年に新たなトップカテゴリー「Bプレミア」を設けるという構想を発表しています。
Bプレミアでは、外国人選手の出場枠制限の緩和が予定されているそうですね。
登録・ベンチ入りは1チーム3〜4人で制限を維持する一方で、出場人数には制限を設けない方針だといいます。
背景には、「男子日本代表強化検討委員会」があります。
日本人をたくさんプレーさせることの重要性を認識しつつ、外国人選手と切磋琢磨し、「外国人選手を打ち破るメンタル」(Bリーグチェアマン・島田氏)を育むことが、中長期的には日本バスケの成長になるというねらいです。
賛否両論あるとは思いますが、これは大賛成です。
ここまでお読みいただいた方ならお分かりでしょう。
外国人選手と日本人選手には、実際に上で見てきたような、大きな差があるわけです。
「日本人だから」というだけで出場機会がもらえるようなぬるいリーグでは、選手のレベルも向上していきません。
渡邊雄太選手が、インタビューで次のように語っています。
「コートの中では3年生だろうが1年生だろうが関係ないようにしなければいけない。(米国のように)競争力を高めるという部分に対してはやっぱり変えていかないといけないなと思います」
日本人の多くは保守的で、競争を嫌う傾向があります。
それは時に、「目上を敬う」いう日本古来の美しい礼節と悪い形で結びついて、さまざまな問題を起こしてきました。
皆さんの職場でもありませんか?
「偉い人=年齢が上の人」という風習。
能力や実績ではなく、在籍年数が年齢が重視される評価システム。
高齢だからというだけで評価される側の悩みだって、あります。
シニアの方のセカンドキャリアを支援されている方が、こんなことを言っていました。
「若い人は、私たちシニアを『シニアだから』というだけで必要以上におそれる。思えば、私も若い頃そうだった。これでは世代間のコミュニケーションはうまくいかない」
こういうのって、正当な競争を邪魔します。
日本には、それこそ国籍問わず、優秀な選手がたくさんいます。
私は一ファンとして、彼らの「リスペクトある競争」を見たいと思います。
Bリーグには、日本人に忖度するリーグだけにはなってほしくないと、強く願います。