NBAは世界最大のバスケットボールリーグ。
選手の契約に限らず、スポーツベッティング(賭博)などでもばく大なお金が動いています。
言わずもがな、スポーツ賭博は勝敗が収益に直結するギャンブルのこと。
多くのギャンブラーが、試合の行方に注目しています。
重要な要素は、何もチームの強さだけじゃありません。
審判のジャッジも、試合を大きく左右させます。
わかりやすい例で言えば、ファウルがありますね。
より多くのファウルをコールしたチームは、それだけフリースローで得点される機会が増えます。
自チームの選手が退場するリスクも高まりますね。
逆にファウルがより少なくコールされれば、終盤でもハードなディフェンスがしやすくなります。
つまり審判はそれだけ、試合を自由に采配できる権限があるということです。
この重責は極めて大きいですよ。
それだけの絶大な力を持つ審判には、様々な誘惑が付き物だからです。
審判の信用を失墜させた大スキャンダル
かつてNBAにはティム・ドナヒーという審判がいました。
1994年から2007年まで笛を吹いたベテランですが、共謀者2名とともに自身が審判する試合に賭けていたことが発覚。
しかも2002年ごろから何度も、自身の賭けたチームに有利になるコールを吹いていたことを供述しました。
この一件は、NBAの潔癖性と公平性を一気に揺らがせた大スキャンダルになりましたね。
当時からNBAを見ていた私のような世代の方なら、ドナヒーの名前は知らなくても、「あーこの顔見たことある!」となるのではないでしょうか。
それくらい、有名な審判だったんです。
なおドナヒーについては長年のギャンブル癖も明らかになりまして、最終的に禁錮15カ月が言い渡されておりました。
この八百長騒動に見るように、審判とはそれだけ絶大な力を持つ存在です。
同時に、その力を正しく振るうことを監視され続ける存在でもあります。
ドナヒーの件以降、NBAは審判に対する教育プログラムを一層厳格なものに仕立てました。
ここで改めて、「NBAの審判とは何者なのか」見ていきましょう。
NBAの審判について知ろう
審判の概要について見ていきます。
上で書いた教育プログラムや、そもそもどれくらい稼いでいるのかも紹介しましょう。
審判のサラリーは最高9000万円にも?
NBAの審判は平均して25万〜55万ドル(約3256万円〜8140万円)を稼ぐとされます。
もちろん、これに加えて健康保険や旅行手当、退職金制度などが与えられています。
ええ職場や…。
審判の報酬は経験年数やパフォーマンスをもとに、2段階から決まります。
①1年目
まずルーキー(初年度)は1試合600ドル(約8万8800円)で、年間約25万ドル(約3700万円)ほどを稼ぎます。
②3〜5年目
ルーキーを経てさらに順調に経験を積むと、3〜5年目で毎試合3500ドル(51万8000円)か、年5500万ドル(約8140万円)ほど稼げるになります。
以上から、NBA審判の最高報酬は8140万円とわかりますね。
ただし!
これにはプレイオフのボーナスが入っていません。
一説には、25シーズン目の大ベテランのシーン・コービン氏はプレイオフ期間中、1試合7000ドル(約103万円)を稼いだと言われています。
また同氏はさらにカンファレンスファイナルとNBAファイナルも吹き、それぞれで2万9000ドル(約429万円)稼いだと報道されました。
これらを含めると、プレイオフやファイナルで審判を担う人物なら60万ドル(約8880万円)は稼げるのかもしれません。
審判にはどうやったらなれる?
ではNBAになるためにはどうすればいいでしょう?
5つのステップで見ていきます。
①審判になる
まずはどこの国・リーグでもよいので、審判としてのキャリアを始めなければなりませんね。
例えば日本でプロの試合を吹けるまでの審判を目指すなら、当然に「審判ライセンス」の取得は避けて通れません。
アメリカの場合は、各州が設置している公式の協会からライセンスを取得し、高校や大学バスケで経験を積んでいくルートが王道。
こうした公式資格を保有し、プロの試合で審判のキャリアを積み上げていくわけです。
※これだけでも決して簡単な道のりではありませんが、本題と逸れるのでこの程度に…
②スカウトを得る
NBAの審判になるためのトライアウトに招待されるには、スカウトを受けるのが最も近道で確実です。
そのためには審判として実績を重ね、より信用と実力が必要な試合での審判をする必要があります。
例えば州の高校トーナメント決勝などですね。
ここでスカウトが来なければ、NCAA(大学リーグ)やNBA以外のリーグでの審判へとキャリアアップします。
NBAはNBA以外のリーグや、米国外のリーグ、FIBAなどの国際大会のレフリーもスカウト対象として観察していますので、ここでさらに実績を積むのです。
なおスカウトでは、主に「例外的な状況への正確な対応」と「ゲームへの誠実さ」、「試合中の位置取り」、「持久力」を見るそうですよ。
日本からNBAのレフリーを目指すとなると、ここが一番難しいかもしれません。
例えば日本でウィンターカップやインカレの主審を勤め上げていても、NBAのスカウトが来るかは怪しいでしょう。
特に、上で書いた「例外的な状況への正確な対応」や「ゲームへの誠実さ」では、何よりも選手・監督とのコミュニケーションが必須です。
流ちょうな英語で多数の試合をさばいた実績がなければ、スカウトは厳しいのではないでしょうか。
③キャンプ&トライアウト参加
スカウトが来たら、キャンプに参加します。
100名を超える競争相手としのぎを削り、まずはミドルレベルのキャンプへの昇格を目指すことになります。
ミドルレベルのキャンプでは100名余りいた候補者のうち40名程度がセレクトされ、さらにうち20名ほどがエリートクラスのキャンプに進みます。
なおキャンプに落選した審判は、その時点でキャンプからはサヨナラですが、その後もスカウトリストには残ります。
引き続きステップアップを続ければ、再びキャンプに招待されることも少なくないそうです。
④Gリーグでの実戦
エリートクラスのキャンプに残った審判はさらに10名ほどまで絞られ、残ればいよいよGリーグで笛を吹くことになります。
NBAの下部リーグ。審判だけでなく選手、コーチ、オフィシャル、トレーナーなどNBAに関わるほとんどの人材や業務部の育成のために活用される。全31チーム
Gリーグの審判はNBAのサマーリーグや、WNBAでも笛を吹く機会を与えられ、おおよそ3〜5年間経験を積むと、いよいよNBAへの道が見えてくるのです。
⑤ノンスタッフ・レフリーとしてNBAに
さて。
GリーグでもWNBAでもサマーリーグでも経験を積んでくると、いよいよNBAのコートに立ちます。
初めはノンスタッフ・レフリーと呼ばれる、準レギュラーのような扱いからスタートし、1シーズンでレギュラーシーズンの10〜20試合ほどを吹くチャンスを得られます。
とはいえ準レギュラー。
通常はWNBAの試合を審判することのほうが多いです。
2022-2023シーズンは8人のノンスタッフ・レフリーが誕生しましたね。
Get to know the current non-staff officials in the NBA, who will be working games this month:
– John Butler
– Mousa Dagher
– Nate Green
– Ashley Moyer-Gleich
– Matt Myers
– Phenizee Ransom
– Natalie Sago
– Evan Scott pic.twitter.com/LrrSWCh8V0— NBA Referees (@OfficialNBARefs) November 1, 2018
彼らは上で見てきた①〜④の厳しい競争を潜り抜けてきた精鋭なんですね。
⑥名実ともに「NBAの審判」に
ノンスタッフ・レフリーとして実績を積むと、ついにフルタイム・レフリーに昇格します。
これはNBAの試合を専任する審判で、名実ともに「NBAの審判」だといえますね。
現在フルタイムレフリーは74名がいます。
フルタイム・レフリーは年間を通して40試合ほどを担当します。
優秀なパフォーマンスが認められたレフリーはプレイオフでの審判を任命され、経験年数にも応じてファイナルも任されることとなります。